メジロマックイーン関連ニュース
この悔しさが夢への布石
▲ 一度は取消で棒に振った夢の舞台に名を連ね
▲ メルベイユ特製メンコに、陣営の気合も
▲ 馬体はまさにビカビカ。絶好調
「姫」と呼び始めてからどのくらいの月日が経ったのかは分からないが、ヤマニンメルベイユは「姫」に相応しいほど立派に成長した。
輸送の度に身体を減らし、色々とおてんばを働き、時に担当厩務員さんから泣きの書き込みがあったことを思い出す。
プラス6?。
大舞台へ輸送されてきた彼女は、渋滞で巻き込まれて減ってしまった前走時からの身体をきっちりと戻して東京競馬場のパドックへ姿をあらわした。
パドックで落ち着いているか。昨年まではそれが好走のバロメータだったが、今年に入ってからはチャカチャカするところは一切見られない。この日も、堂々とゆっくり周回を重ねた。
メルベイユの少し前をダービー馬が歩いていたが、目には力がなく、いかにも状態一息。チャンスは十二分に見えた。
▲ 目がうつろなウオッカ
やがて騎乗合図がかかると柴山雄一騎手がメルベイユ姫の前に現れる。入れ込む様子はなく、落ち着き払ったまま背に柴山ジョッキーを乗せる。口を真一文字に結び、ほどよく気合の入った表情を見せる柴山雄一騎手。メルベイユ姫は落ち着いたまま。彼女はきっと分かっていた。最高の相棒が味方についていると。
馬上から一言、二言、関係者と話を終えた柴山騎手は、メルベイユ姫の鬣沿いを丁寧に撫でながら、地下馬道へと姿を消した。
▲ ベストカップルです
▲ 柴山騎手と会話をしながらパドックを後に
地鳴りのような歓声が聞こえてくる。
だがヤマニンメルベイユ姫と柴山雄一騎手との間に生まれた空間には、一切の雑音が入ってくる余地はないらしい。まったく折り合いを欠くことなく、スムーズに返し馬を追えてスタート地点へと向かう。
再度、猛烈な歓声が沸き起こる。
ウオッカの入場だ。しかも武豊は敢えてウオッカをスタンドの近くへと導き、ファンへお披露目をしてみせた。「これがダービー馬なんだ」と。流れの悪い豊が、まるで自分で自分を追い込むように、ウオッカへ最後の調整を施す。
やはり相手はダービー馬か。
▲ 凄く気持ち良さそうな返し馬
▲ 豊はあえてウオッカをスタンドの傍へ
ポンと好スタートを決めたメルベイユ姫は、内の馬の出方を伺いながらじんわりと前に行く。ほどなく内田博幸騎手とピンクカメオが先手を打ち、メルベイユ姫はスムーズに2番手を確保する。
すぐ後ろにはニシノマナムスメや差し馬勢がずらり。ベッラレイアが先団の外目を追走していることを知れば、誰しもが思うはず。スローペースだと。正確なラップタイムは現地でわからなかったが、各馬の脚捌きの遅さだけでもそれは感じ取れた。
大欅の向こう側を通り過ぎてもペースは上がらない。
ここまで遅いと、もう先行すれば有利というわけではない。ヨーイドンの直線勝負では、位置取りどうのより、決め手のある馬が最後には勝つ。
懸命に粘るメルベイユ姫に「がんばれ」と声援を送りながら、視界の一番外でウオッカが物凄い勢いで伸びてきたことを確認した瞬間に、敗北を悟った。
突き放されるメルベイユ姫に、伸びるウオッカ。
構図は最悪のものだったが、ゴール後にはよくも悪くも驚きが待っていた。
メルベイユは沈むどころがもう一度盛り返して後続を封じて4着に。全馬を一気に交わしさったと思っていたウオッカは、ゴール前で失速し2着に。
勝ったのはつい先日まで自己条件を走っていたエイジアンウインズだった。
「手前をもっと素直に替えてくれれば、もっと違ったかもしれません」という柴山騎手のレース談話を聞くと、エイジアンウインズなら、もうちょっと並ぶ形になればあるいは……という思いもなくはない。が、競馬でタラレバを言っても仕方がない。
メルベイユ姫と柴山雄一騎手が苦労を重ねて持ってきたGI 4着という結果は、勝てなかったからといって決して汚れるものでもない。今までの頑張りを形にしてくれた、素晴らしい誇るべき勲章だ。
足りなかった「あとちょっと」は、この日の悔しさを糧に、我々はもっと大きな声援で彼女たちを後押ししていけば、きっと埋まるはず。
夢はこれから。戦いはまだまだこれから。メルベイユ姫と柴山騎手もまだまだまだまだこれから。