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メジロ牧場最後の府中


変えられないものを受け入れる力、そして受け入れられないものを変える力をちょうだいよ

 自分にとってのメジロ収めをしに府中へ。
 今年初めて足を運んだ中央の競馬場は、10年くらい前から比べると信じられないくらいに閑散としていた。5月の東京開催なんてGI シーズンのまさに真っただ中で、毎週、毎週、活気に満ちていたものだけど、時代は変わった。
 少し前の新聞には、ローズキングダムから武豊が降ろされる記事が載っていた。トップホースの鞍上がころころ替わることも、もはや珍しいことでもなくなった。
 時代は変わった。それが間違いとか正しいとかではなく、僕の知っていた競馬は年月を積み重ねて変わってしまった。
 メジロの最後を告げる横断幕のすぐ傍で、僕はカメラを構えた。
 パドックを周回する馬の元へジョッキーは誰も来ず、オーナーの姿も見えない。ただ淡々と時間は流れ、レースも実にあっさりと敗れ、そして僕にとってのメジロ応援は地味すぎるぐらい地味に終わった。いつものように目的のレースのためだけに競馬場へと足を運び、そして帰路に着く。
 時代は流れている。
 満ちたものはやがて欠けていく。それは自然の成り行きでもあり、我々にはどうすることもできないのかもしれない。
 だけどもやっぱり、今はまだ受け入れることができない。
 マックが好きで、メジロが好きだから、ここまで競馬を見てきた。その一つが今、無くなろうとしている。
 誰かが言った「血統表の中でメジロは生き続ける」と。確かにそうなのかもしれない。だけど、馬を取り巻く環境や人や、そういったもの全てをひっくるめてメジロなのであって、やっぱり何かひとつでも変わってしまうと、どうしても受け入れ難いモヤモヤとしたものが生まれてくる。
 大人になって、現実と冷静に向き合い、そして今回のことを前向きに受け止め、新しいメジロを楽しむのがいいのかもしれない。いやそれが正しいに決まっている。
 でも今の僕には、このことを受け入れるだけの度量がない。
 マックの孫がGI を勝っても素直に喜べないのと同じなのかもしれない。これを受け入れちゃうと、今抱えている夢を妥協して喜んでいるような気がして、気持ちが悪い。心が疼く。
 マックの仔でGI を。メジロのマックっ仔でGI を。メジロのマックっ仔で親子四代天皇賞制覇を。
 何年追い続けてきたと思うんだい。ここ数日のことだけで簡単に受け入れられるわけはない。
 まだ言えない。「ありがとう」も「お疲れ様」も。まだ無理。

5月14日 東京7R 4歳上500万 芝2000m
2枠2番 メジロクリントン 吉田豊57 5番人気7着
5枠5番 メジロビューレン 江田照男57 6番人気9着

メジロビューレン
馬の瞳はいつもと変わらず澄んだまま

メジロクリントン
歩く姿も悲壮感なんてなく

メジロビューレン
最後、最後と騒ぐのは人ばかり

メジロクリントン
緑のターフに映える色

メジロビューレン
もっと写真をいっぱい撮ってあげればよかったね

[2011 05/16]

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